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Satoshi Hasegawa

L.サモシの歌唱法と教授法6

更新日:2020年11月8日


(4) 声を自由にさせるために有効なこと

・左右の耳のすぐ下にある顎関節をほぐす。

 この場所が閉じたり固まったりしていると息は流れてこない。反対にここが緩むと丸く豊かに声は出て行ける。前述のように最重要のポイントである。顎関節を緩めたり動かしたりする方法での練習は多大な好結果をもたらす。顎関節が緩んでいると 圧力なしで肺からの呼吸が出ていくからである。また顔面を硬くせずに,顎と口を楽にすれば横隔膜は自動的に動くのである。

・上体が硬くなっていても同様に軋轢が生じる。

・低い声を油断すると高音への移動が困難になる。低声でのリラックスは大切だが,声のメカニズムを厚くすると次のフレーズがうまく歌えない。

・フレーズの出だしが出しにくいときは先に息だけをこぼすように吐いて,息が出て行く途中から声にしてみる練習が有効である。

・出だしをためらって待たないこと。待つと必ず圧力が来る。吸ったらすぐに吐く。何気なく子供の遊びのように出す。

・痰を出したり,嗽をしたりする形での練習によって,固まっている口蓋を柔らかにすることができる。

・自分の身体全体が骨などのないゼリー状のものであると想定して発声する。あるいは自分の身体が溶けていくイメージで歌う。そして緊張した筋肉が解かされると,身体の中が繊細になっていく。

・狭い母音だからといって漠然と喉を広げて安全に歌おうとするとよく歌えない。I の母音ははっきり I である。 

・構えないで,声のことを考えないように注意して歌うと良い声が来る。声はうまく出たときは自分にはよく聞こえないものだ。空気の音だけが聞こえる。筋肉の響きなど聞こえない。しかし上達するにつれてそのうちリリックに聞こえるようになる。

・無理に歌おうとしたり,オーヴァーな表現をすると発声にブレーキがかかってしまってよく歌えなくなる。必要でない筋肉が動いてしまって正しいものを邪魔するからだ。

自分では歌っている感覚がない,誰かが歌っている,と思われるときが最もよい歌唱ができている。

・舌の位置は前でも奥でも固定しないで緩めておけば息は流れる。

・声を大きくしようとすると神経が緊張し筋肉が緊張する。イタリアの有名な声楽教師だった P.F.トージは,「歌手が誤りやすいのは,自分の声が聞き手に届いていないのではないか」という不安から大きく出そうとするところから始まる。と書いている 7)。

・声を支えようとしたり,かぶせたり,廻そうとしないでそのまま真っ直ぐ出していくようにする。

これは「BEL CANTO Principles and Practices」の著者であるアメリカの声楽指導者C・L・リートも指摘している点である。彼は支えること(Support)とかぶせること(C o v e r i ng) が現代の歌唱が低迷している二大原因であるとしている 8)。

・響かせようとしなくても,息が正しいところを通るとよく共鳴するところへ行ける。それで輝きのある声となるのである。

(5) 練習方法について

・練習は小さな声で行い,練習でのフレーズはいつも短いものを基本にすべきである。長いフレーズでの練習は息の止まりを呼び易い。

・どんなに速いパッセージにおいても内面では落ち着いて練習することが大切である。急ぐと焦りを呼びフレーズの途中が抜けたり,空回りしたりといった事故の元となる。いつでも静かな落ち着きをもって練習に臨むこと。そして身体に何が起きるか気づかねばならない。忍耐が練習には不可欠である。

・発音練習もゆっくりと落ち着いてやること。

・すべての母音を同じように同じ場所で発音する。

・フレーズとフレーズの間に十分時間をとって前の息を緩めてから歌いだす。

・ステージでのことをあらかじめ想定して練習に入らない。緊張する練習をしてはならない。発声のレンジを広げておくことが重要。どのみちステージではプレッシャーが来てそのレンジが狭まるわけであるから。

・ブレイクの場所について。声は自然に変わっていくから自分で変えようと意図的にはしない。またそのことを考えてはいけない。なぜならそれが念頭にあるといつまでもそれは消えることがない。

・足,尻,腹,胸,背骨,首周辺,肩,腕とすべてを捨て去っていく感覚で練習していく。これは「支え」てしまって頭部と腹部が互いにリンクして自由さを失った状態を解くのに有効な練習方法である。 

・感情は身体を硬くさせる。楽器等の練習同様,無感情で練習していくべきである。

・誰でも初心者のように歌うことが重要。毎回 初心者の気持ちで練習に入る。




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